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2026/10/20
制震ダンパーは、地震の揺れを吸収して建物の変形や損傷を抑える装置です。
地震への対策として有効な一方で、具体的な役割が分かりにくく、「つけても意味がない」と言われることがあります。
そこで本記事では、制震ダンパーの役割と意味ないと言われる理由、検討すべきケースと判断のポイントを解説します。
新築で制震ダンパーの導入をご検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
このコラムを読んだら分かること
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制震ダンパーとは、建物の壁の中などに組み込み、地震の揺れによるエネルギーを吸収する装置のことです。
地震への備えには、大きく分けて耐震・制震・免震の3つの考え方があります。
3つは役割が異なるため、違いを知ると、制震ダンパーで得られる効果が見えてきます。
耐震とは、柱や梁、壁などを強くして、地震の力に耐えられる建物にする考え方です。
一般的には、筋かいや構造用の面材を入れた耐力壁をバランスよく配置して、建物の強さを確保します。
国土交通省の基準では、最も高い耐震等級3を、極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力の1.5倍の力に対して倒壊、崩壊等しない程度と定めています。
耐震等級は1〜3の3段階で、等級1が建築基準法と同じ水準の強さにあたります。
耐震は、地震で建物が倒れないための土台となるのです。
制震とは、建物に組み込んだ装置で揺れのエネルギーを吸収し、建物の変形や損傷を抑える考え方です。
国土交通白書2020では、制振を「建物内部に重りやダンパーなどの制振材を組み込み、地震の揺れを熱エネルギーなどに転換し、吸収するもの」と説明しています。
〈参考〉国土交通省ウェブサイト「国土交通白書2020(コラム 持続的な社会を目指して~新『国立競技場』にみる技術~)」
壁の中に制震ダンパーを取り付けて、柱や梁の変形を抑える方法が一般的です。
制震ダンパーには、オイルの抵抗を利用するものや、ゴムのように伸び縮みする素材を利用するものなど、さまざまな種類があります。
制震は、耐震で確保した建物の強さに、揺れを吸収する働きを加える対策です。
免震とは、建物と基礎の間に免震装置を設けて、地震の揺れを建物に伝わりにくくする考え方です。
免震装置の上に建物が載るため、地震のときは建物全体がゆっくりと動き、揺れを軽減します。
建物そのものが揺れにくくなる一方で、装置の設置に加え、建物のまわりに揺れを逃がすスペースも必要になります。
戸建て住宅で免震設計を採用する場合は、費用や敷地の条件もあわせて確認が必要です。
耐震性の最高等級である耐震等級3については、以下の記事で詳しく解説しています。

制震ダンパーには、「導入しても意味がない」という声もあります。
ここでは、制震ダンパーが意味ないと言われる3つの理由と、家づくりのプロとしての見解を紹介します。
制震ダンパーが意味ないと言われる理由の1つは、耐震等級3があれば十分だと考えられていることです。
耐震等級3は、地震で建物が倒壊・崩壊しにくい強さを示す等級です。
しかし、耐震等級3は建物の強さを示すもので、地震による揺れや建物の変形そのものを小さくするものではありません。
強い建物でも、大きな地震では柱や壁に力がかかり、建物は変形します。
制震ダンパーは、この変形を抑えるための装置で、耐震等級3とは役割が異なります。
そのため、制震ダンパーを付けても、耐震等級の算定には原則として反映されません。
等級3で十分かどうかは、建物の強さだけでなく、揺れによる変形まで抑えたいかどうかで考えましょう。
制震ダンパーは、断熱性能のように毎日の暮らしで効果を感じられる設備ではありません。
効果が表れるのは地震が起きたときに限られるため、日々の暮らしで費用対効果を感じにくいと考える方もいます。
また、どれくらい揺れを抑えられるかは、試験や解析のデータでしか確かめられません。
費用に見合うかどうかは、メーカーの試験データや、設計者による構造の検討結果をもとに判断することが大切です。
制震ダンパーの効果は、建物の構造や間取り、ダンパーの本数や配置、地震の揺れ方によって変わります。
メーカーの資料に載っている低減率などの数値は、特定の条件で試験した結果です。
数値だけを見て、自分の家でも同じ効果が出ると考えるのは避けましょう。
カタログの情報はあくまで参考程度に考え、建物にあわせて配置や本数を設計することで、制震ダンパーの効果を最大限に発揮できます。
効果を左右する設計のポイントについては、記事の後半で詳しく解説します。

ここでは、どのようなケースで制震ダンパーの導入を検討するのが良いのかを解説します。
建物の強さに加えて、揺れによる変形や損傷も抑えたい場合は、制震ダンパーを検討するのがおすすめです。
耐震等級3の家は、大きな地震でも倒壊・崩壊しにくい強さを備えた住まいです。
一方で、地震の揺れで建物が大きく変形すると、壁や建具などに影響が出る恐れがあります。
制震ダンパーで建物本体の変形を抑えれば、部分的なダメージを軽減できるのです。
大きな窓や吹き抜けのある開放的な間取りを希望する場合は、耐震性の確保とあわせて、制震ダンパーの導入も設計者に相談してください。
大きな地震では、強い揺れが一度で終わらず、続けて起こることがあります。
2016年の熊本地震では、4月14日と16日の2回、熊本県で最大震度7の揺れが観測されました。
〈参考〉気象庁ホームページ「平成28年(2016年)熊本地震」
制震ダンパーは揺れのエネルギーを吸収するため、繰り返しの揺れに備える選択肢の1つになります。
何十年も住む家なら、その間に起こるかもしれない地震への備えが不可欠です。
長く住む予定の家では、繰り返しの揺れへの備えとして、制震ダンパーを検討する価値があります。

制震ダンパーは、耐震性を土台にして加える対策で、耐震の代わりにはなりません。
ここでは、制震ダンパーより耐震性の強化を優先すべきケースについて解説します。
予算が限られている場合は、制震ダンパーより先に、構造計算で耐震性を高めることを優先しましょう。
制震ダンパーは、耐震性を確保した建物に加えることで、揺れを抑える働きを期待できる装置です。
耐震性が不十分なまま制震ダンパーを導入しても、地震への備えは不十分になりやすいです。
まずは耐震等級3を目標に、緻密な構造計算を行ったうえで建物の強さを確保しましょう。
設計の段階で耐震性能を固めたうえで、予算に応じて制震ダンパーを加えるかどうかを判断してください。
北伸建設では、必ず構造計算を行い、計算結果にもとづいて基礎から柱・梁まで耐震性を高めた家づくりを行っています。
地盤調査の結果、地盤改良や基礎の補強が必要になった場合は、その費用を先に確保しましょう。
地盤や基礎は建物を支える土台で、建築後に改良などを行うのは困難です。
新築では、建物の配置が決まった段階で地盤調査を行い、改良や補強が必要かどうかを確認します。
地盤や基礎の対策に費用がかかる場合は、制震ダンパーより、建物を支える土台を優先することが大切です。
地盤や基礎の費用が確定してから、残りの予算で制震ダンパーを加えるかどうかを判断しましょう。

ここでは、制震ダンパーを導入するときの4つの確認ポイントを紹介します。
制震ダンパーは、建物の構造にあわせて、本数と配置を決めることが大切です。
同じ本数でも、どの壁に、どの向きで取り付けるかによって、揺れを抑える働きが変わります。
取り付ける部分の柱や梁、接合部の補強も、製品ごとに決められた方法にあわせる必要があります。
構造計算で建物の揺れ方を確かめたうえで、配置を決めてもらいましょう。
大きな窓や広いリビングのある間取りでは、壁の量や配置が限られるため、構造の検討がより重要になります。
開放的な間取りと失敗を防ぐ設計術については、以下の記事も参考にしてください。
制震ダンパーの性能を比べるときは、数値だけでなく、どんな条件で試験した結果なのかを確認しましょう。
メーカーの資料には、「揺れを〇%低減」といった数値が載っていることがあります。
しかし、試験に使った建物の大きさや構造、地震の揺れの種類、何を測ったかによって、数値の意味は変わります。
たとえば、建物の変形の大きさを比べた数値と、揺れの加速度を比べた数値は、同じようには比べられません。
実物大の建物を揺らした試験なのか、コンピューターによる計算上の解析なのかも確認しておくと、資料を正しく読めます。
複数の製品を比べる場合は、同じ条件の資料を設計者に用意してもらうと安心です。
制震ダンパーの費用は、本体の価格だけで比べないことが大切です。
本体費用のほかに、取り付ける工事や取り付け部分の補強、配置を決めるための設計・解析の費用が加わります。
見積もりを比べるときは、製品名と本数、本体代、工事費、設計費がそれぞれ含まれているかを確認しましょう。
金額だけを比べると、含まれている内容の違いを見落としてしまいます。
耐震性を高める費用とのバランスも、見積もりを比べるときの重要な判断材料です。
制震ダンパーは壁の中に取り付けることが多いため、入居後の点検方法を事前に確認しておきましょう。
大きな地震の後に、装置や取り付け部分の状態をどのように確認するかも、施工会社に聞いておくと安心です。
メーカーが示す耐久性の年数は、劣化を早める試験などにもとづく目安で、保証期間とは異なる場合があります。
製品の保証期間と保証の範囲、地震後に交換が必要になったときの対応についても、契約前に確認しましょう。
建物全体の点検や記録の残し方は、長期優良住宅の維持保全の考え方が参考になります。
制震ダンパーとあわせて長期優良住宅の認定を受けるかどうか迷っている方は、以下の記事も参考にしてください。

ここでは、北伸建設が手がけた、構造計算を行い制震装置を取り入れた住まいの事例を紹介します。
制震装置を取り入れた住まいの間取りや設計の特徴を、順番に見ていきましょう。

こちらは、北杜市に建つガレージ付きの2階建てです。
構造計算を行ったうえで制震装置を取り入れた、「制震装置付構造計算住宅」です。
事前のヒアリングで施主様のお手持ちのインテリアをうかがい、雰囲気をあわせる形で内装を設計しました。
写真のLDKは、木の梁を見せた勾配天井と、床まで届く大きな窓が印象的な開放感のある空間です。
開放的な空間や大きな窓を取り入れながら、構造計算と制震装置で地震への備えも整えています。
▶︎▶︎▶︎事例詳細【博物館のようなお家【57坪】】へ

こちらは、北杜市に建つ白を基調としたシンプルな内装の住まいです。
長期優良住宅の認定を受け、構造計算を行ったうえで制震装置を取り入れています。
写真のリビングには造り付けの壁面収納を設け、すっきりとした暮らしと使いやすさを両立しています。
広いシューズクロークやパントリー、サンルームの洗い場など、子育て中の家事を助ける工夫も詰まった住まいです。
長期優良住宅と制震装置で、住まいの性能と快適性、地震への備えを大切にした事例です。
▶︎▶︎▶︎事例詳細【子育てが快適になるお家【41坪】】へ
北伸建設の家づくりを実際に体感したい方は、モデルホームへお気軽にお越しください。
制震ダンパーは、地震の揺れを吸収して建物の変形や損傷を抑える装置で、建物の強さを確保する耐震とは役割が異なります。
「意味ない」と言われることもありますが、耐震性を確保したうえで、変形や繰り返しの揺れにも備えたい場合には検討する価値が十分にあります。
ただし、予算が限られる場合は、耐震性の強化や地盤・基礎の対策を優先することが大切です。
採用するときは、構造計算にもとづく配置や試験の条件、費用、点検と保証の範囲まで確認しましょう。
今回の内容を参考に、ご家族が安心・安全に暮らせる住まいを実現してください。

HOKUSHIN(北伸建設株式会社)は、地元山梨県北杜市を中心に、「居心地のよい住まい」を届けたいという想いで、お子さまのいるご家族からセカンドライフを考える方まで、誰もが健康的に暮らせる家をご提案しています。
現在は、2つのモデルホーム「自然素材たっぷりでやわらかな住み心地の家」「365日どんな季節も床から快適な家(全館空調の家)」を軸に新築事業を展開中です。
地震への備えを重視した安心・安全な住まいを、一緒に考えてみませんか。
ご相談では、構造計算にもとづく耐震性の考え方から、制震装置を取り入れるかどうかの判断まで、ご家族のご要望にあわせてご提案いたします。
ぜひ施工事例もご覧いただき、ご相談ください。
【モデルホーム】
・365日どんな季節も床から快適な家(全館空調の家)
パッシブデザインを取り入れ、全館空調で家中どこにいても快適な温度を保てる住まいです。平屋のような暮らしやすさを追求した半平屋など、新しいスタイルもご提案しています。
・自然素材たっぷりでやわらかな住み心地の家
勾配天井や薪ストーブを設けるなど、木のぬくもりを活かした家です。長期優良住宅に対応しており、住まいの耐久性や省エネ性も高めています。


北伸建設 専務取締役 秋山龍也
資格:
一級建築施工管理技士/二級建築士/宅地建物取引士
山梨県北杜市を拠点に、創業48期目の北伸建設で自然素材を活かした注文住宅を年間約10棟手がける。
家族一人ひとりが健やかに暮らせる“体に優しい住まい”を理念とし、無垢材を活かした「雨楽な家」を採用。
三児の父としての実体験をもとに、30年後も「建ててよかった」と思える家づくりを追求中。